「ッ、アレスさま……っ」
「少し濡れているね」
くちびるが笑みの形になり、彼の美貌に欲情の色が映し出される。
「なにが最もよかった?
きみの小さな耳をしゃぶったことか、可愛い胸を揉んだことか、それとも舌を絡め合わせて深く口づけたことか」
「そんな、こと……っ、ん、ぁ、だめ……っ」
布地の上から陰核を指で転がされた。
エルサは、未知の快感に熱く息を乱した。
しばらくそこを弄ってエルサを切なく啼かせて、アレスはやがて、ほっそりしたエルサの脚からショーツを抜いた。
そのときショーツは、エルサの愛液にしっとりと濡れた状態だった。
これまで男性に見せたことのない箇所を露わにされて、エルサは羞恥に泣きたくなる。
けれどマイアが、今夜アレスにされるのは、裸体にされて全身を愛でられ、男性の証を下腹部に埋められるのだと言っていた。
だからショーツは絶対に脱がなくてはならないのだ。
頬を真っ赤に染めて震えているエルサを、アレスは獰猛に光る瞳で見つめていた。
涙に潤む薄紫色の瞳、すべらかな首すじ、ふっくらした胸と、その先端にある色づき。
「エルサ……」
狂おしく呼びかけながら、アレスはその先を口に含んだ。
同時に、愛液に濡れた隘路を指先で探ると、エルサはアレスの下で大きく震えた。
「ぁああ……っ!」
芯の通り始めた乳首に熱い舌が絡みつき、上下に扱かれる。
鋭い快楽に犯されて、エルサのくちびるから高い喘ぎ声がこぼれた。
彼の指で弄られる花びらからは、淫靡な水音が立っている。
割れ目の内側の、赤く濡れた粘膜を何度もこすられて、下腹の奥に切ない熱量が溜まっていく。
「ひぅ、ぁ、や、ぁぁ……っ」
唾液にまみれ、舌戯に弄ばれた乳首を、ちゅっと吸い立てられた。
陰核を剥かれて撫で回され、エルサの視界が愉悦にまたたく。
「ああぁん……っ」
「ああ、エルサ、きみの感じている顔もすごく可愛いよ」
胸元から顔を上げて、エルサの頬を片手で包みながら、アレスは間近から見下ろしてきた。
涙の滲む目尻に口づけて、舌を這わせる。
「ぁ、っ……、あ、だめ、もう」
そのあいだも、下肢の淫粒は弄られ続けている。
「だめ、っあ、ん、アレスさまぁ……っ」
「可愛い――エルサ。
俺のエルサ。ほら、見届け人などいなくてよかっただろう?
きみの甘い声や、ミルク色の肌や、快楽に溶ける顔を、俺以外のだれにも見せるものか」
欲情し切った彼の瞳や、むき出しの独占欲を纏う声にさえ、エルサは官能を掻き立てられてしまう。
ぐちゅ、ぐちゅ、と、媚肉の襞の表面で、アレスの指が水音を立たせる。
その指の与える快楽に取り縋りかけて、エルサはハッと羞恥に返り、みだらな声をこぼす自身のくちびるをてのひらで覆う。
「っ、ん、ん……っ、……っ」
「堪えなくていいんだよ、エルサ」
アレスは、肉食獣が子兎を見据えるような瞳でエルサを見下ろしながら、口元を塞ぐ彼女の手に口づけを落とす。
「もうこれ以上、耐えなくていいんだ。エルサ、きみはもう自由なんだよ」
「わたし――でも、……でも、っん、ぁ、あぁ……ッ」
愛液をこぼしながらひくつく体内に、アレスの指が差し入れられた。
節くれだった、長く力強い指が、きつく締まった膣孔に、ずくずくと埋め込まれた。
「――っ、ア、や、ぁぁ……っ」
か細い腕で、エルサはアレスの胸板を押した。自身を侵食する男の力を、拒絶する本能だった。
きみは自由だと言いながら、エルサのうちに入り込み、すべてを犯しつくそうとする雄の、身勝手な独占欲を、無意識のうちに拒絶したのかもしれない。
「――エルサ」
エルサの拒絶を受け止めて、けれど決して離さずに、アレスは耳元でささやいた。
「きみを愛してる」
「――っ、ぁ、だめ、やめて……、め、だめ……」
「愛してるよ、エルサ」
指を根元まで押し込んで、アレスは突き当りを愛撫した。
その感触は、信じられないほどの快楽をエルサに強要した。
「ッだめ、ぁ、ああぁ……っ!」
「俺は――、世界でいちばん愚かな王に成り果てるだろう」
欲情と恋情に引き回された呼気の下、アレスは我を忘れたような声音で言う。
「きみが俺のものであるのなら、ほかになにもいらない」
再奥に長い指を突き入れながら、別の指で、むき出しの陰核を擦り立てる。
とたん、エルサの体内で、淫熱が膨れ上がって破裂した。
「――――、っ」
甘く切ない声を上げて、エルサは始めての絶頂に押し上げられた。
目の前のアレスに縋りつき、薄紫の瞳から涙をこぼす。
「ァ、レス、さま……、っぁ、あ……」
「俺にはもうきっと、ほかになにもいらない。
エルサ、きみを愛してる」
「っや、ぁ、あ……っ、たすけて、もう、わたし」
指が引き抜かれる。代わりに当てがわれた大きな熱源に、エルサの喉が震えた。
「ひ、ぁ……っ」
ずくりと熱塊がねじこまれて、エルサは目を見開いた。
逃げようとする体を、強靭な腕が絡め取って抱き込んだ。
体をふたつに裂かれるような痛みに、エルサは涙をこぼした。
「っ、ふ、……っ」
「すまない、エルサ。
痛いか?」
言いながら、エルサに何度も口づけて、アレスはかすれた声で繰り返す。
「エルサ。
愛してる。愛してるよ」
「っ、ん、あ、痛(い)、……っ」
「エルサ――」
「や、ぁ、あ、たすけて、……」
ぬめる蜜襞を磨りあげながら、肉塊がねじこまれてくる。
痛みと、そして、突き上げるような快楽を感じながら、エルサはか細い声を上げた。
少女と、その先の狭間から、搔き消えるべき呼び声を、切なく小さく叫んだ。
「にいさま……、にいさま、……、ッん、あ、ぁ……!」
「――、エルサ」
男の獣性にからみつく淫靡な襞に、身も心も奪われつつも、アレスはエルサの呼び声を、真正面から受け止めた。
わかっている。
エルサの世界のすべては、彼女の兄たちだった。
カストルと、ルイスと、ロキだった。
可憐な体内に欲望を押し込みながら、アレスは、理性と本能の臨界点で、エルサを両腕で抱きしめる。
それでもいい。
彼女の過去は、不本意だが、奴らにくれてやる。
けれどその代わり、エルサの未来はすべて俺のものだ。
アレスは上体を起こした。
汗にしっとりと濡れた細腰を両手でつかみ、欲情の滾りを、初々しい蜜壷に押し込んでいく。
その、途方もない快感に、アレスは歯を噛み締めた。
甘く切ない啼き声が、アレスの劣情をこれ以上ないほど煽り立てる。
根元まで埋めて、少し引いて、また突き入れる。
かき混ぜるようにして、エルサの感じるところを擦りたてていく。
グジュグジュと音を立てて愛液があふれ、アレスの性器にいやらしく絡みついた。
固く膨れた陰核を、指でふれて撫で回した。
するとエルサはより一層よがって、濡れそぼった襞でアレスをきゅうきゅうと食い締めてくる。
「――っ、エルサ……!」
「ぁ、あアぁ、ん、っひ、あ……ッ!」
痛みよりも快楽が勝ってきたのか、エルサは瞳を潤ませ、頬を上気させて、アレスに両手を伸ばしてきた。
アレスはたまらなくなって、その手をつかんで彼女を引き寄せた。
胡坐をした自身の脚の上にエルサを乗せて、真下から花びらを貫き、両腕で背中を抱きしめる。
もっとも深いところまで、アレスの切っ先が抉りこんだ。
やわらかく包まれて、抜き差しするたびに締め付けられて、アレスの全身が快楽という名の麻薬に塗りつぶされていく。
「っ、は、エルサ――」
「アレスさま……、アレスさま――」
汗に濡れたエルサの両腕が、アレスの首元に回って抱きしめた。
すぐ耳元で、彼女の甘い喘ぎ声で名を呼ばれて、アレスは達してしまいそうになった。
華奢な体を突き上げて、愛液をかき混ぜるように揺さぶって、彼女の弱いところを擦り上げる。
密着した下肢が、膨れた淫粒を刺激するたびに、エルサは快楽に溺れ切ったような泣き声を上げた。
エルサの後頭部をつかんで、くちびるを奪う。
舌をねじ込み、蹂躙する。
上と下から無垢な体を犯し尽くし、切羽詰まった感覚がせり上がってきて、アレスは自身の滾りを強く深く打ち付けた。
これまでにない締め付けによって、快感の波に襲われる。
エルサが高く喘いで、体をビクビクと震わせて、彼女が達したことを知らせた。
直後、アレスは愛しい少女の体内に、白濁した精を放った。
「――っ、……」
「ぁ……」
力の抜けたエルサの体を、アレスは力強く抱き寄せる。
荒れた息の下で、彼女の耳にくちびるを押し当て、ささやいた。
「すまない……初めての夜なのに、激しくしてしまった」
「ん……、アレス、さま……」
彼女の中から自身を抜き、抱きしめたままシーツ上に横たわる。エルサの髪に口づけると、甘い花の匂いがした。
「愛してるよ、エルサ」
眠りに落ちていく花嫁に、アレスは心を込めてそう告げた。
翌朝は穏やかに晴れていた。
アレスの腕の中で目を覚ましたエルサは、こちらと目が合うと、驚いたような顔になった後、頬を赤く染めた。
「びっくりしました。
ここが城塞ではないことにも、目の前にアレス様がいらっしゃることにも」
「そうだな、きみは七年間ずっと城砦にいたから、無理もない。
けれどこれからは毎朝こうして、俺の腕の中で目覚めることになる。すぐに慣れるさ」
エルサの頬にキスをしながらそう言うと、エルサはさらに赤くなった。
もぞもぞと身動きして、それからアレスの裸を見て、自分の体を同じように見た。
いまさらながら、二人が何も身につけていないことに気づいたのだろう。そして、昨夜の情事を思い出したに違いない。
エルサが羞恥にどうにもならない様子になっているのを見ながら、アレスは幸せを噛み締めた。
俺の妃はなんて可愛いのだろう。これを毎日見て、聞いて、味わうことができるのか。
最高だ。
最高の人生だ。
「ひとつ聞いてもいいかい、エルサ」
エルサに見とれながら、アレスは彼女の髪を撫でた。
「昨夜きみは、見届け人がいないことに不安を感じている様子だったね。
けれど、きみはこんなにも恥ずかしがり屋だ。
いないほうがホッとしそうなものだが、どうして不安になったんだい?」
「ええと、それは」
エルサはしどろもどろに答えた。
「初夜についてのことをマイアに教えてもらったときに、見届け人のことも聞いたんです。
最初はやはり、見られるのは恥ずかしいと思ったのですが、マイアが言うには、アレス様の場合は、最初は見届け人がいたほうが、わたしに無理をしてこないだろうから良いと言ったのです」
「……。
なるほど、俺がきみに無理を」
「無礼を申し上げていたらすみません。
その、マイアは、わたしの体を心配してくれていただけなのです。
彼女が言うには、これまで我慢されてきた分、爆発して激しくなって、無理をなさるかもしれないと。
正直、無理をなさるとはどういう意味なのか、わたしはよくわかりませんでした。
でも、昨夜を経験して――」
エルサは、火照る頬を両手で包みながら恥ずかしそうに言った。
「なんとなく、理解しました」
可愛い。
その仕草も、しゃべり方も、声すら可愛い。
「きみの侍女は賢いね、エルサ」
アレスは笑みを浮かべながら、エルサのひたいに口付ける。
一旦は収まっていた劣情が、むくむくと回復してくるのが自分でもわかった。
昨日の今日で、その上朝から抱くのはさすがにまずいだろうか。
けれどすでに下腹部は熱くなり始めている。
目の前の夫が狼に変貌しようとしていることなど少しも気づいていない様子で、エルサは嬉しそうに笑う。
「そうなのです。
マイアはとても賢くて、有能な侍女なのです」
「ああ、そのようだね。
でも俺にとってはエルサがもっとも賢くて、有能で、それでいて最高に可愛い女性だよ」
「そ、そのようなことはないです。
アレス様は買いかぶりされています」
「そうかな」
アレスはエルサの裸体を抱き寄せながら、滑らかな肌に手を這わせた。
情欲のかいま見える触れかたに、エルサの体がピクリと反応する。
困惑したようにアレスを見上げた
「アレスさま、あの、もうそろそろご起床されないと――」
「まだもう少しなら大丈夫だよ」
甘い声でささやききながら、アレスは彼女とくちびるを重ねた。
「好きだよ、エルサ。
可愛いきみをもう一度抱かせて」
一度で満足できるといいけれど、とアレスは心の中で付け加えた。
この状況を後で知らされたマイアは、やはりしばらくは見届け人を置くよう奏上するべきかもしれないと、悩みに悩んだという。