25 お風呂は一人で入るものです

「で、殿下っ」

「今度もう少し大きい浴槽を注文しようかな。ああ、ドレス脱ぐのに侍女を呼んだ方がいい?」

「いえ、先ほど簡素なものに着替えたので特には……、って、殿下!」

 胸下切り替えのシンプルなドレスを、簡単に腰まで引き下ろされた。やわらかな布製の胸あてまで取り払われて、ふるりと二つのふくらみが揺れる。

「やっ……いけません、殿下」

 剥き出しの肌に熱い湯気が触れる。メルヴィンはフランセットをタイルの上に下ろし、ドレスを足下まで落としてしまった。ついでに膝上までを覆うドロワーズも。

 とっさに腕で体を隠そうとした。けれど両手首をメルヴィンにつかまれてしまう。
 恥ずかしさに、フランセットの白い肌が上気していった。

「お、お風呂は……お一人で、リラックスしながら入るものです。それに今は大事なお話をしていた最中で」

 メルヴィンの顔が見られない。蚊の鳴くような声で訴えたが、返ってきたのは見当違いの言葉だった。

「ああ、やっぱり綺麗だな、フランセットは」

 メルヴィンは感嘆したように言いながら、フランセットの曲線をてのひらで撫で下ろした。びくんとフランセットの体が震える。

 メルヴィンの体温はいつも、フランセットより少しだけ高い。触れられるとぞくぞくして、甘い痺れが広がっていくのだ。

 メルヴィンは自身のタイを緩めながら、もう片方の腕でフランセットを抱き寄せた。唇を奪われて、深く舌を差し入れられる。フランセットのそれもきつく絡められ、吸い出されて甘く噛まれた。

「ぅん……っ」

 頭の中まで掻き回されてしまったように、意識が朦朧としてくる。メルヴィンの仕立ての良い服が、無造作にタイルへ落とされる音が聞こえる。熱い素肌とたくましく鍛えられた両腕で、抱きしめられた。

 口付けが深い。絡み合う二つの吐息が、薄く開けた目に映るようだった。

 やがてキスがほどかれて、胸の奥に抱き込められる。まるで閉じ込められているようだ。彼の唇が耳に寄せられ、上の部分を甘く噛まれた。

「あんまり綺麗で、優しく抱かないと、壊してしまいそうだ」

 低く掠れた声が耳に触れて、下肢が甘く震えた。
 メルヴィンの手が、愛しげに背中を撫で下ろしていく。彼の手の形、その固さまで、フランセットの肌は記憶している。

「大切にするから、このまま抱いても?」

 フランセットは彼の胸板に顔をうずめた。メルヴィンの手が、小ぶりのお尻を味わっている。いやらしいことをされている、そう思うだけで官能の熾火が煽られる。

 長い指が前へ滑った。閉じたそこを、ゆっくりと押し開いていくように。
 痺れるような快楽が、波紋のように広がっていく。

「ッあ、ん……!」

「濡れてるね」

 耳に寄せられたままの唇が、弧を描いたのが分かった。
 羞恥が煽られる。それなのに、体内から染み出る蜜の量が増えた気がした。淫らな水音が増したからだ。

「ほら。いやらしくて、綺麗な体だ」

 長い指でぬめりを塗り広げるような動きが繰り返されている。襞を浅くかき分け、じっくりと愛でるように。
 ぞくぞくとした愉悦が背すじを這い上がり、フランセットの足から力が抜けていく。その時、熟れかけた粒を指の腹で押し上げられた。

「あ、ぁああっ、や、だめ……っ」

「だめならここでやめようか」

 崩れる体を片腕で抱きとめられる。メルヴィンの優しい声音は、残酷さを含んでいるようにも聞こえた。フランセットは無意識に、首を横に振っていた。

 興奮に膨れる尖りを、執拗にぬるぬると弄られている。意思に反して、体がびくびくと震えた。

「あ……! メルヴィン、さま、そこばかり……っ、やぁ」

「我慢しないで。イかせてあげる」

 二本の指でつままれ、こすり合わされる。
 毒のような快楽に冒されて、フランセットの視界が白くなった。達しかけた時、別の指が深々と奥へ差し込まれた。

「――ッ」

 メルヴィンのたくましい腕を、つかんだ。爪を立ててしまったかもしれない。

 淫らな水音を立てて、出し入れされる。達したばかりの体が細かく喘いだ。
 いつのまにか指が増やされている。湯気の立ちこめる室内に、自分の声が反響している。寝室にいる時よりも、生々しく聞こえた。甘くて、縋るようで、恥ずかしい。

 けれどメルヴィンは、こんなにいやらしいフランセットを、かわいいと言う。情欲にまみれた双眸で、見下ろしながら。

「あなたの中は温かくてぬるぬるして、こうして指で触れているだけで気持ちがいいよ」

 中のざらついたところを撫でさすられ、剥き出しにされた尖りを押しつぶされる。体が跳ねて、また達した。

 三本の指が中で蠢いている。それを、快楽に喘ぐ襞が締め付けている。あふれる蜜で、彼のてのひらはひどく濡れているのではないだろうか。

「ァ……、だめ、もう……っ」

 フランセットはすでに、自分の力で立てていなかった。腰に回った力強い腕と、中から押し上げる彼の指に支えられていた。
 唇を貪られる。ぬるついた舌にあらゆるところを蹂躙される。

「ん、ん……っ、ふ、ぁ、あ」

「ああ、甘いな。あなたの口の中が、一番甘い」

 唇の端から零れた唾液を舐めとられ、また激しい口付けを与えられる。犯され続ける下肢はぷちゅくちゅと淫らな音が零れ続け、フランセットは何度も軽い絶頂に押し上げられていた。

 気持ちいいと、それだけしか考えられなくなる。視界だけでなく、頭の中も水に沈んだように曖昧になっていく。
 力強い指が蠢く体内。そのもっと奥が、きゅっと締まった。

 そこに彼が欲しい。
 押し広げて、舐るように奥まできて、突き上げてほしい。激しく、何度も。

「っ、あ、ん……っ、もう、メルヴィンさま、もう、くださ……」

 腰を抱く腕に、力がこめられる。

「お、ねが……、挿れて、ください」

「そんな目をして」

 目尻から零れた涙を、彼の舌に舐め取られた。その熱さに、ぞくりとする。