舌を絡められ、激しく貪られながら、ローゼは寝台に押し倒された。両の手首を顔の横に押さえつけられて、口づけがさらに深まっていく。
くちゅ、じゅく、と淫らな水音が、真っ白いシーツに染み込んでいった。舌を絡めとられ、ヴァルの口中に招き入れられ、甘く噛まれた。彼の歯の奥にある舌先を、ちろちろと舐められて、喉の乾きに似た痺れが走り抜ける。じゅっと唾液を吸い上げられても、羞恥を覚える余裕など持てなかった。
艶のある張り詰めた乳房は、ヴァルのてのひらによってきつく形を変えられた。指の間から突き出た色づきはすでに凝り、ヴァルの口中に含まれて舌で愛撫されれば腰のあたりまで熱が広がる。
「っあ、ん、ん……っ」
乳首に吸い付くヴァルの、赤銅色の髪に手を差し入れる。いつもさらさらしている髪は湯や汗にしっとり濡れて、ローゼの細い指にからみついた。
ヴァルは両方の胸を両手でつかむようにして揉み込みながら、頭を下げていく。お腹の中心を熱くぬめる舌で辿り、小さなおへそをやわらかく抉り込んだ。
「ひぁっ、ァ、だめ……っ」
ひとしきり窪み舌で愛でながら、揉んでいる双丘の先端を指の腹でくりくりと撫で回す。ローゼは腰を震わせて、切なく啼いた。悲しくもないのに涙が零れて止まらない。
ヴァルが触れるところ、撫でるところ、舌が這うところ、甘く噛まれるところ、どこもかしこも、おかしくなってしまいそうなほど気持ちがよかった。白い肢体が寝台の上で花びらのように震えて、それをヴァルが、愛しげに貪っていく。
「ぁ、あ、あ……っ、ヴァルさま、ヴァルさま」
「ローゼ……」
平らな腹部や、やわらかく弧を描く胸もとに、いくつもの赤い花が散っていった。所有の刻印なのか、愛しさの証なのか、ローゼには分からなかった。
(おく、に……)
ずっとひっきりなしに、ひくつき震える箇所がある。ぽってりと熱を持ち、足をすりあわせても身を捩っても、どうにもならなかった。
「ヴァルさま……」
乳房に吸い付かれ、甘い吐息を零しながら、ローゼはヴァルの髪に指をからめる。細くて白い指は快楽に震えていた。
「奥、さわって、ください……」
顔をあげたヴァルは、形のいい眉をきつく寄せた。なにかに耐えるように目を伏せたのち、ローゼの唇を奪うように口づけた。
胸を揉んでいた手が、下肢へと撫で下がる。反対の手は、ローゼの側頭部に添えられていた。
「ぅん、……んっ」
甘く絡みつくような口づけを与えられながら、ローゼは彼の指が下肢のあわいに触れたことを知覚した。ぞわりと全身が快楽の予感にざわめき、そして彼の指は、その予感を裏切らず、揃えた二本の指を膣の中にねじこんできた。
「っう、ぅん……ッ」
びくんとローゼの腰が跳ねる。膣の中に溜まっていた蜜が、彼の指が入ったことによってぐぷりと外へ押し出された。ぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てながら、ヴァルの指はローゼの中を大きく掻き回していく。まるでこれから挿れるものの道を確かめているかのような動きだった。
彼の指はローゼを知り尽くしていて、ひと撫でされただけで達しそうになるほど気持ちがいい。淫らな彼の指技に耽っていると、ふいにそれが引き抜かれた。
代わりにあてがわれたのは、指と比べものにならないほど大きく太く、滾るように熱い欲望だった。
ヴァルはローゼの顔の両横に、両肘から先をついた。軽く唇にキスをして、蜜であふれる谷間を先端でじっくりと撫で下げていく。
ヴァルの碧玉は情欲に光り、なにかを耐えるように歯を噛みしめていた。掠れた声で名を呼ばれた気がする。蜜によって粘度を増した襞を、芯の固い先端がまさぐっていく。
「ローゼ」
熱い吐息に濡れた、けれど深く優しい声で、ヴァルは言った。
「愛しているよ」
ずくりと熱の塊が入ってきた。ふっくらと潤った媚肉が、大きな質量に押されて歪んでいく。
ローゼは赤く濡れた唇を震わせた。ヴァルの舌がそれを宥めるように優しく撫でた。唇を寄せながら囁く。
「優しくするから、怯えなくていい。快楽だけを感じればいいから」
「あっ……、ヴァル、さま……っ」
ゆっくりと、本当にゆっくりと、ヴァルは入ってきた。息苦しくなるほどの快楽が水深を増すように、ひたひたと満ちてくる。
少し引いてはじっくりと押し進める動きに、襞がみちみちと濡れた音を立てた。ローゼの両脚に力がこもり、びくんと震えた。
「ア……いき、そう……で、す……」
ぎゅっとヴァルの腕をつかんでローゼは上擦った声を上げた。ヴァルが熱い吐息を漏らしながら、ローゼの髪を撫でる。
「ああ。好きなだけ」
ヴァルは長めに腰を引いて、ずるっと中に入ってきた。敏感な襞をこすり上げられる感触に、ローゼはいっきに昇りつめる。
「っあ、ああ……!」
しなやかな背が、シーツの上で跳ねた。その間にたくましい片腕を差し入れて、ヴァルは細い腰を抱き込んでいく。彼の熱い素肌が、ローゼの肌を滑るだけで怖いくらいに感じた。気持ちいい、ただそれだけの感覚に、全身が犯されていく。
まだ半ばまでしか呑み込んでいない男の欲望を、ローゼは知らず食い締めていく。ヴァルは息を詰め、絶頂の快楽に蠢動する膣肉を、最奥まで貫いた。
「ああああっ!」
ローゼの琥珀色の瞳から、涙がぽろぽろとこぼれていった。体内のすべてが愉悦に溶かされて、自分の体がどこにあるのかさえ不明瞭だ。
ヴァルの先端は、子宮の底に辿り着いていた。ぐっと押し込まれて、それが悦(よ)くて、ローゼはすすり泣きながら身を捩った。
「ひぅ……っ、う、ぁ、ああん……っ」
「もう少し」
歯を噛みしめながらヴァルが言った。ローゼの華奢な腰を、自身の膝の上に乗り上げさせる。角度が変わって、擦り上げられる場所が微妙にずれて、激しい快楽が突き刺さる。ローゼは悲鳴を上げた。
「待っ、ァ、いやぁっ」
けれどヴァルはローゼを離してくれなかった。めまいのするような快楽に、ローゼは蹂躙されていく。理性はとうに置き去りにされていた。
じゅくじゅくと前後に揺すられながら、ヴァルがまだ入ってくる。もうこれ以上は無理だと思うのに、ローゼの体内はけなげにひくつきながらヴァルを受け入れ続けていく。
ごりっと子宮の底に、先端がめりこんだような気がした。本当はそんなこと、起こるはずがない。快楽に下がった子宮が、ヴァルの先端に押し上げられただけだ。けれどそんな知識を持ち合わせていないローゼは、声すら上げられない悦楽に赤い舌を震わせた。
貫かれ続けて、絶頂から降りられない。
「っふ、ぅ、ッ……」
「は、っローゼ――」
ヴァルの熱い体が覆い被さってきた。下唇を優しく吸うように口づけられる。
薄く目を開けると、白銀の鱗が光る頬の上を、うっすらと汗が流れていた。
「全部入ったよ、ローゼ」
甘やかすような声音で、ローゼの桃のように上気した頬を撫でる。彼の息は荒く、こめかみから白銀の鱗へ汗が流れていた。
「ぜ、んぶ……?」
「ああ」
「も、おしまい……?」
震える指で、ぎゅっとヴァルの腕をつかむ。
「嫌……まだ、抜かないで。いっしょにいて、ください」
「ローゼ」
ヴァルの口づけが、もう一度落とされた。余裕のない笑みが刻まれる。
「本当にかわいいな、おまえは。かわいすぎてどうすればいいのか分からない」
「ヴァルさま、お願い……、っん」
ヴァルがわずかに腰を揺らした。
「一度だけ、中に出させてくれ」
「ぁ、あ……っ」
「二度はしない。竜の精は、繰り返し吐精することで濃度を増す。最初の一回は、種のない体液だ」
ヴァルが長く引き下がり、一息に奥まで貫いた。突き当たりを抉り込むようにされて、ローゼは目を見開く。
「ぁああっ!」
腰が砕けてしまうかと思うほどの悦楽だった。ぐちゅりと大きく押し回されて、ローゼは背中を震わせる。甘すぎる毒を呑み込んだように、ぐずぐずに溶けていく。
「ぁ、あ、ああ、きもち、いい、っあ、ヴァル様……っ」
ヴァルの首もとに両腕を回して縋りつく。ヴァルの熱い呼吸をうなじに感じて、ローゼは肩を震わせた。
「ああ――俺も、気持ちがいい」
自身の滾りを奥へ押し込みながら、ヴァルは掠れた声で言った。
「おまえの中は、とろとろに熱く吸い付いてくる。本当に気持ちがいい」
「っ、ヴァル、さま、も……?」
さっきまで処女だった膣肉を、ぐちゃぐちゃに犯されていた。ヴァルも気持ちがいいという事実に、ローゼは深い歓びを覚える。
何度も最奥まで穿たれて、溶けきったお腹の奥から熱い何かがせり上がってくる。
終わりが近くて、だからローゼは、いっそうヴァルにしがみついた。絶頂に達する瞬間、奥の方が熱い何かに濡らされたような気がして、それからローゼは、墜落するように気を失った。