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「ああ……たまんねぇ、おまえの匂い……」

 壁際に体を押しつけて、アスカはあたしの首もとに顔をうずめている。
 歯の根も合わないほどに、あたしは震えているしかなかった。

「普段もだが蒼月の夜は格別だ。おまえにはわからないかもしれないが、『闘士』にはたまらないんだぜ。めんどくせぇこと抜かしてたユーマも、おまえの体を舐めるように見てた。しかも満月――」

 耳の裏で匂いをかいで、唐突にアスカの舌が皮膚を舐め上げた。ビクリと肩が跳ねる。

「すっげぇ甘い――最高だ、楓子」

 髪をかきあげて耳たぶを甘噛みする。優しく触れたと思ったら、唐突に後頭部を鷲掴みにして、深く口づけた。

「ん……っ! ふ……っ」

 何度も角度を変え、貪るように口づけられる。太い舌が無理やり入りこみ、あたしのそれをからめとる。キスだけで、体中を凌辱されているような激しさに、あたしはかすれた声をもらすことしかできない。下唇をやわらかく噛み、突然ごつごつした手が上衣(ディール)の下から入りこみ、ズボンをいっきにひきおろした。

「やっ……!」

 ショーツをはいていない下肢があらわになる。アスカは片手であたしの手首をまとめ頭上の壁に縫いつけ、反対の手で自身のものを取りだした。

「や、待っ……、ぅあああっ」

 なんの準備もほどこされていないそこへ、アスカの太い熱杭が打ちこまれた。
 激痛で眼裏に火花が散る。

「っ、楓子。すげぇ、おまえ」
「ぁ、あっ……、い……っ」

 一息で最奥まで貫いた杭は、数秒その場で静まった。体をふたつに引き裂かれるような痛みに、涙が零れた。乱暴にそれを、アスカの指がぬぐう。

「いいぜ――もっとなけよ」

 アスカのたくましい腕があたしの腰をぐっと抱きよせる。一度すべてを引きぬき、さらに奥へ突き立てた。
 灼熱の痛みが走る。圧迫感が内臓を押しつぶす。

「あぁっ! や、ぃや……いたい、アスカ……っ」
「もしかして久しぶりか? とっくにシンにヤられまくってると思ってたが、っ、すげえ締まる」
「は……、ぅんっ……!」
「ああ、すげー気持ちいい」

 アスカはあたしの片膝裏を持ち上げて、さらに強く、深く、何度も肉棒を打ちつける。
 準備の整っていなかった襞は充分なぬめりがなく、擦過され傷ついていく。
 アスカの手が上衣に潜りこんだ。胸を鷲掴みにし、強い力でこねまわした。のけぞる喉に、かみつくような口づけが襲う。

「ん、ぁ……! いっ……」
「やべ、イきそう」

 抽送がさらに早く、激しくなり、あたしの体をガクガクと揺らした。引き裂かれるような痛みとともに、あたしは叫び声を上げる。アスカは獣のように己の唇であたしのそれを貪り、低く唸り声を上げて、昂ぶりを胎内に放った。

「ったく10代の餓鬼か、オレは」

 力なくアスカの胸にもたれかかる。重い、と顔をしかめて彼は無造作にあたしを押しやった。むき出しになった下肢がもつれ、固い岩場に倒れこむ。けれどもう、頬をこする痛みすら感じなかった。
 かすむ目を開けると、気絶しているユーマの顔が間近にある。
 震える手を動かして、彼の手に重ねた。冷たい。

「ゆー、ま……」
「あ? 今なんつった?」

 激しく機嫌を損ねた声で、アスカがいった。足さきであたしの肩を押し。上向きにさせる。

「他の男の名前呼んだんじゃねーだろうな」
「……っちが」
「黙れこの淫売」

 片膝をつき、あたしの上衣をつかみあげる。目前に燃えるような青の双眼が迫り、あたしは震えた。

「シンとはヤってなかったみてーだから、ご褒美に少し休憩をやろうかと思ってたんだが。気が変わった」

 乱暴に上衣を引きちぎり、馬乗りになる。悲鳴すら凍りつく。極寒の夜に曝された肌が粟立つのは、冷気のせいだけじゃない。
 露わになった双丘を両手できつくつかみ、顔を近づけて、唸るようにアスカが言った。

「抱き殺してやる」