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「おい、どうすんだよ。『蒼月の巫女』を殺しちまったらアスカが激怒するぜ」
「応急処置を施したから大丈夫だろう。血の量も少ない」
「それにしてもこいつの肌、すげえ白いな。やわらかそうだ」

 じくじくと、熱が脇腹を苛んでいる。ゆっくりと意識が浮上して、ごつごつした土の上に寝かされていることを、知覚した。

「リオウはどうする。殺すか?」
「いや、それはアスカの指示を待て」
「ちっ、あのババア余計なことしやがって。悪口で注意を向けさせて巫女を誘いこむだけでよかったのによ」
「彼女は今どうしている?」
「オレらの姿見て逃げてった。月狼のクランに帰ったんじゃね?」

 重たい目をゆっくりと上げた。うす暗い中、橙色の光がゆらめいている。どこかで燭台が燃えているのだろう。だんだん視界が効いてくると、岩の壁が見えた。ここは横穴だろうか。
 それにしても、寒い。ゆっくりと手を動かし、脇腹を探ると、腹部全体に包帯が巻かれていた。そして信じられないことに、包帯以外の衣服をすべて脱がされているようだ。身じろぎすると、素肌を固い土がこすった。

「おい、ヒリュウ。お目覚めみたいだぜ」

 大柄な男に覗きこまれた。目がかすんでいて、細かい顔の造りが見えない。ただ、ヒリュウという名には聞き覚えがあった。

「どけ、クウガ」

 細身の男が片膝をつき、わたしのあごをつかみとる。脇腹が引き攣れてうめき声を上げた。男――ヒリュウは薄い笑みを浮かべる。

「久しぶりだな楓子。もっともおまえにとっては忌むべき再会だと思うが」
「アスカ、は?」

 かすれる声で問う。
 彼らはヒリュウとクウガ。アスカの取り巻きたちだ。『月狼族』は全部で200人ほどいるから、うっすらとしか覚えていないし、言葉を交わした覚えもない。
 けれど、つい最近ユーマが言っていた。最近、ヒリュウたち数人がアスカと合流するために集落を出ていったと。

「彼は今、いない。これはオレたちの独断だ」
「頭(かしら)が痛い目遭わされて、黙ってじっとしてる一党なんざあるわけねーだろ」

 クウガが立ったまま腕を組み、嘲る。

「アスカはあんたを欲しがってた。でも『鋼の王』が近くにいる今、慎重になってる。アスカに付き従う人数は徐々に増えてきてるから、そいつらを養うためにいろいろ動かなきゃならねーしな。だからオレたちが一計を案じたわけだ」

 信じられない。あんな男に従うことを是とする人たちがいるなんて、馬鹿げている。

( オレは大嫌いだぜ )
( あんなクソったれな一族、とっとと滅びちまえばいいんだ )

 憎悪のこもったアスカの声を思い出す。
 彼らもまた、『月狼族』を嫌悪しているのだろうか。
 『獣化』をとどめ、一族の滅亡を食い止める『巫女』と『闘士』をこのような奸計にはめるということは、つまりそういうことだ。

「リオウはどこ?」
「すぐそこで寝てるぜ。後頭部一撃で気絶しやがった。あの戦いっぷりには正直ビビったから縄で縛ってるがな」

 クウガがあごをしゃくったが、頭が重くてそちらを向けない。脇腹がずくずくと痛むが、それよりも寒い。震えながら肩を抱えると、ヒリュウに上体を起こされた。

「ぶ厚い上衣を着ていたから、傷は浅い。大げさな女だ」
「寒いの。服を、ちょうだい」

 震える指でヒリュウのえりもとをつかんで、訴える。治療の過程で脱がされたのだろうが、乳房や下肢がむき出しになっているのも嫌だった。
 「ああ」今気づいたように、ヒリュウは片眉を上げる。

「そうだな、日中といえど今の時期は冷える。だがこのようななめらかな肌をわざわざ隠すのは無粋だと思わないか?」

 彼が何を言っているのか、すぐに理解できなかった。
 やがてじわじわと意味を知り、全身から血の気が引く。

「待っ……て。いや」
「オレらは女旱(おんなひでり)でなァ。『蒼月の巫女』はずいぶんと具合がいいっていうじゃねえか。見た目もいい。リオウにばかりヤらせてないで、オレらにも分けろよ」

 クウガがヒリュウの正面に片膝をつき、わたしのあごをつかんだ。力の入らない唇をこじあけて、親指を口中に侵入させる。

「ふ……、んん……っ」
「やわらけーな、女の粘膜は」

 クウガの指は、土と汗の味がする。じっくりと嬲られ、ビクビクと体が震えた。その時、ヒリュウのてのひらがむき出しの乳房を包みこむ。

「ぁっ――や、いや――っん」

 親指が引きぬかれ、カサついた唇が押しあてられた。ガチガチと鳴る歯を簡単にこじあけて、舌が侵入してくる。双丘をこねる指が、乳首をつねり、もみこんだ。
 視界が歪む。
 絶望があたりを砕き、漆黒に塗りつぶした。

 ぐちゅぐちゅと、淫らな音が暗がりを漂う。

 わたしは立ち上がらされ、天井から吊るした縄に両手を縛られている。足先がかろうじて地面を擦っている。引き延ばされた脇腹が悲鳴を上げ、包帯を赤く染めていた。

「ん――っく、あっ――」

 ヒリュウの両手が背中から胸に回り、ふくらみを蹂躙する。赤く色づいた先をしつこく嬲り、やがて立ち上がったのを見て卑猥な言葉で耳を犯した。首筋に唇を押しあて舌をねっとりと這わせ、時おり強く吸い上げる。

「あ、やぁ……っ、いや、いやだ……」
「噂通り、吸いつくような肌だ。肉もやわらかい。それに、淫乱だ」
「ちがっ……ぁあ!」

 嬲られ続けて赤く腫れた乳首を、強い力でつままれる。背中が弓なりにそったとき、脇腹を激痛が貫き、頭が真っ白になった。

「い……っ。ぁ、い、たい……、もう、やめて……」
「やめてというわりにはグチョグチョだけどなァ」

 正面からわたしの涙を無造作にぬぐい、クウガが笑う。彼の太い指2本は秘所に根元まで埋められていて、ぐにぐにと蠢いていた。

「ぁ、ん……っ、や、いや――」
「嫌じゃなくて気持ちいいだろ? ヒクヒク震えてからみついてくるぜ。オレの右手、もうべとべとだ」

 中で2本の指が同時に折り曲げられて、内壁をこすられた。恥丘にてのひらを押しあてるようにして、ぐちゅぐちゅと指を手前に引いたり戻したりする。強すぎる刺激に、腰がビクリと引き攣れた。

「ひぁ……っ! ァ、だめ、だめ……っ」

 体中をこねまわされるたび、膣内の襞がひくつき、とろみのある蜜をあふれさせたた。わななく内ももを熱い液が伝う。
 おぞましさと恐怖で全身が震え、視界が歪む。
 脇腹の痛みと、絶え間なく与えられる男たちの指が、脳内をかき回す。
 クウガの腕がきつく腰に巻きつき、太い指がさらに奥を抉った。のけぞって泣き声をあげると、彼は薄く笑って、空いていた親指の背で花芯を押しこみ、ぐりっと抉った。

「っいや、――あ、」

 強い力で、親指の背が花芯をゴリゴリと苛む。体を丸め、嫌だと泣いて許しを乞う。けれどいっこうに解放されることはなく、波のようにせり上がってくる何かに戦慄し、絶望した。

「っア、ああああっ」

 視界が白く染まり、膣内が震え、やがて全身が脱力した。肩で息をするわたしの後頭部をつかんで、ヒュウガが上向ける。

「やっぱり淫乱じゃねぇか」

 涙がひとすじ、流れた。
 背後でヒリュウが嘲笑する。

「この体で族長をも虜(とりこ)にしたのか。恐ろしい女だ。だがこうなればすでに玩具に等しいがな」

 やわやわと長い指が胸をもみ、もう片方のてのひらが下腹を撫でさする。茂みを嬲るように梳かれ、わたしは震えながら首を振った。

「もう……やめて。っん、……っねがいだから――」
「――楓」

 その声がふいに投げこまれ、わたしは言葉を失った。
 ざらついた視界の中で、クウガの奥に、愕然と目を見開いてリオウがこちらを見ていた。

「やっとお目覚めか。今イイとこなんだ。お前も混ざるか?」
「クウガ、やめておけ。縄をほどいた瞬間に、のどを掻ききられるぞ」

 くつくつと、背後でヒリュウが笑った。
 リオウの胴体に巻きついた荒縄は、土に穿たれた杭に強固に繋ぎとめられている。立ち上がれるほどの長さはなく、リオウは膝立ちのまま、乾いた声を響かせた。

「なにを……している」
「見てわかんねーのか?」

 クウガが指を膣内に埋めたまま体をずらし、わたしの痴態をリオウの目に曝した。
 わたしの喉の奥で、悲鳴になりそこなった呼気がひゅうと縮まった。
 後ろから胸と腹部を嬲られ、さらに別の男の指で胎内をかき回されている。それを、見られている。全身の水分が乾いて、眼球がひりつき、涙すら出ない。
 再びクウガの親指が、不気味なほど優しく、淫芽をなぞる。腰がわななき、つま先が土にこすれた。

「……っあ」
「――楓」
「んっ、や、ぁ……っ」

 背後のヒリュウが耳の裏を舐め上げて、両手でじっくりと胸の双丘をもみまわした。つんと尖った赤い頂きを親指で擦りあげる。そのたびにわたしの口から、泣き声が零れた。

「――きさまら」

 地獄を這うような声が、リオウの噛みしめた歯の間から滲み出た。眦(まなじり)が裂けんばかりに、引き攣っている。

「ころしてやる」
「やってみろよ」

 クウガが嘲りながら自身のズボンを腿の途中まで引きおろし、そそり立つ己自身を取りだした。それを見たわたしの視界が、プツプツと黒く塗りつぶされてゆく。
 太い亀頭が、嬲られ尽くしてドロドロになった割れ目をゆっくりと上下になぞった。

「――ひ、ぁ、」

 ひくり、とのどが引きつった。
 リオウが見ている。
 見られている。

 わたしを映すリオウの目。いつもは明るい青の瞳が、灼熱の怒りに塗りつぶされていた。底のない沼に、赤黒いマグマがどろどろと煮え滾っていた。

「――っあ」

 つぷりと先端がぬかるみを割る。
 恐怖と混乱に脳内がかき回される。

「り、おう……」

 背後から回されたヒリュウの指が、どろどろに溶けた淫芽をかき回す。
 熱に冒された喉の奥から、声が零れた。

「たすけて、リオウ」

 リオウの顔が色を失い――瞳すら、無に沈んだ。
 そして、恐ろしいほどの空白が落ちた。

 この後に起きたことを、わたしは正確に、記憶していない。