花火のおかげで、夕食会は大好評のまま終了した。
今回のトラブルは今後に生かそう。フランセットはそう決意しつつ湯あみを終え、いつものように寝室のソファにいた。昨夜のように、メルヴィンの湿った髪をタオルで拭っている。
メルヴィンは、気持ちよさそうな顔でぼーっと座っている。ツヤツヤの黒髪がとても綺麗だし、すっかり気のゆるんだ表情は可愛いしで、フランセット自身も夫から癒しを得つつ、寝る前のひと時を満喫していた。
「はい、拭けましたよ殿下」
「ありがとう」
フランセットはソファの上で膝立ちになっているから、メルヴィンより少しだけ目線が上になる。メルヴィンは、フランセットからタオルを引き取ってテーブルに置き、彼女の腕を引き寄せた。
「殿下?」
「いい匂い。夜のフランセットは、甘い香りがする」
ナイトドレスの腰に彼の腕が回る。ぽすんとメルヴィンの顔が、フランセットの胸に埋まる。
「きゃあっ、ちょっと、殿下っ」
「ずるいな、フランセットは。こんなに可愛らしいナイトドレスの下に、こんなに美味しそうな体を隠してるんだから」
布越しに、乳房を甘く齧られて、フランセットはびくんと背を震わせた。
「殿下、だめです……っ」
「今日の夜会用のドレスも可愛かったけど、ナイトドレスもとても素敵だね。こういうの、持ってたっけ?」
パウダーイエローのふわふわした寝衣である。胸もとのリボンと裾のレースが、(めまいのするほど)可愛らしい。これもクローゼットの奥に眠っていて、アレットにより発掘された物だ。
「フランセットの胸、やわらかくて気持ちいい」
天使のようにとろけた笑顔でメルヴィンが言うものだから、フランセットはついほだされてしまう。
「そ、そうでしょうか。ボリュームは少し足りないと思うんですけど」
「そんなことないんじゃない? ほかの女性を知らないから、よく分からないけど。僕はとても好きだな」
「で、殿下。あんまり頬ずりしたり、そこでしゃべったり、しないでください」
けれど「好き」と言ってもらえて嬉しいフランセットである。なにしろ女性としての自信を喪失している真っ最中なのだ。
でも胸を褒められて喜んでいるのを悟られるのは、やはり恥ずかしい。フランセットはつい憎まれ口を叩いてしまう。
「メルヴィン様もハタチの健康的な男性なのですから、わたしよりも大きな胸をしている女性をつい目で追ってしまうようなことがあるんじゃないですか?」
「へえ、やきもち?」
面白がるような声とともに、胸の先端のあたりをぺろりと舐め上げられた。熱い快楽が走って、思わず肩が動く。
「やきもち、などではなく……っ。わたしはただ、一般的なことを、言った、だけです」
こういうことを言ってしまうから、可愛げがないのだ。
メルヴィンが小さく笑った。
「僕の下半身は、あなた以外にピクリともしないのに」
「だっ、だからそういうことを爽やかな笑顔で言ったらだめです!」
「可愛い体」
メルヴィンが、布越しに胸にキスをしながら熱っぽく囁くから、フランセットの頬がみるみる赤くなった。
「体、とか、言わないでください」
「どうして?」
「だって……殿下が言うと、なんだかとっても、いやらしいです」
「それはそうだよ。だって今、いやらしいことしか考えてないんだから」
さらりとした布を、フランセットの胸が押し上げている。そこに、ゆっくりと男の指が這っていく。五指がやわらかく沈み、間から柔肉がたわんではみ出した。絹になめらかなシワが生まれて、余計にいやらしく見える。
メルヴィンはそこに、優しく歯を立ててきた。
「っ、あ、でん、か……っ」
「僕は健康的なハタチの男だから、あなたばかりを目で追っているよ。僕の下で喘がせる妄想ばかりしてる」
「なっ……、そんな、ことより、ご公務を、ちゃんとしてください……!」
「そんなものだよ、男なんて」
ちがう、絶対にちがう。はずだ。
フランセットは反論したかったが、メルヴィンの指が、胸の先端を撫でまわしてきた。そのせいで、くちびるから漏れたのは甘ったるい喘ぎ声だけになってしまう。
「あ、ァ……っ」
「仕事はちゃんと頑張ってるよ。知ってるでしょう?」
答えを求めるように、メルヴィンは凝り始めた乳首を摘まんで擦り合わせた。強い快楽に、フランセットの思考回路が乱されていく。
「っん、知って、ます……、っあ」
「僕らはお互い頑張ってるから、夜は一緒に気持ちよくなろう」
メルヴィンの舌が、布越しにふくらみを這いあがり、指で愛でている先端の側面を、ぬるぬると舐め始める。
絹が素肌に張り付いて、赤い色づきがうっすらと透けて見える。片腕で腰を抱き寄せられ、もう片方のてのひらで乳房を揉まれながら、指先と舌で熟れた果実を味わわれる。
ピンと糸を張るような愉悦が、下腹部に届いた。フランセットは背中を震わせて、切ない喘ぎを零す。
「だめ……っ、そっち、ばっかりっ……」
「ああ、ごめんね。あんまり触り心地がいいから、夢中になってしまったよ」
「きゃぁっ」
突然、手付かずだった反対の乳首をきゅっと摘ままれた。淫らなざわめきが体内を駆け降りて、フランセットは悲鳴を上げた。直後、執拗に愛でられていた方をちゅうと吸い上げられる。
「あ、ァ……っ! 待っ、殿下ぁ……っ」
「あなたの言うとおりにしているだけだよ」
喉の奥で笑いながら、メルヴィンは甘噛みを繰り返す。もう片方の小さな果実は、二本の指によってくにくにと弄られていた。
「ひ、ぅ、あぁ……」
膝から力が抜けた。かくんと崩れ落ちる体を片腕だけで抱き止められる。その手が器用に動いてナイトドレスの裾をたくし上げていき、すべらかな太ももを味わっている。てのひらが少しずつ這い上がり、ショーツの中に入りこんで、小ぶりのお尻を淫らに揉みしだき始めた。
甘い疼きが腰のあたりに広がって、思わず身を捩ってしまう。乳房を食んでいたメルヴィンが、小さく笑う。
「いやらしい動き」
「メルヴィン殿下が、そんなふうに、触るから……っ」
ショーツの腰紐が解かれた。太ももの表面を、シルクがするりと滑り落ちていく。着慣れないナイトドレスの中で、フランセットの奥がひくんと震えた。
「可愛いな。僕のせいにしてくれるんだ?」
お尻の方から指が伸ばされて、すでに潤みを帯びた媚肉の中を、かき混ぜられる。そうすると、みるみるそこが甘く熟れてきて、とろとろと蜜が零れ、淫らな水音を立て始めた。
「ん、ん……っ、ァ、ん……」
「フランセットはこうやって、ゆっくり撫でて可愛がると、猫みたいに甘い声で啼くね」
凝りきった乳首をちゅっと吸われた。同時に、膨れかけた下肢の粒をぬるりと撫で上げられたので、フランセットは今度こそ、メルヴィンの胸に崩れ落ちてしまう。すると、下肢を弄っていた指がずぷりと隘路の中に押し入ってきた。
「ぁああっ!」
熱線のような愉悦に貫かれて、フランセットはびくんと大きく震えた。とっさに上へ逃げようとする体を、腰に回ったメルヴィンの腕が押さえつける。
とろけきった蜜襞に、節くれだった指が根元まで埋め込まれていく。固い指の腹が、奥の弱いところをごりっと押し回したから、フランセットは目を見開き体を強張らせた。
「っあん、あああっ」
「ほら、とろとろだ」
メルヴィンは襞をかき分けるようにしてぐじゅぐじゅとかき回す。力ないフランセットの体を軽く持ち上げて、自身の上に跨がせた。ソファの上で向かい合う体勢になったので、フランセットは縋るように、メルヴィンの首もとにしがみつく。
「メルヴィン、殿下……でんかぁっ……!」
「僕の指をきゅうきゅう吸い上げているよ。ほら、顔を見せてフランセット。あなたの感じ入っている顔を見たい」
「や、です、見たら、嫌……っ」
「可愛い」
赤く上気した頬に、口付けられる。漆黒の双眸が淫欲に濡れて、フランセットを映している。
メルヴィンのガウンが、片方の肩口からずり落ちて、その肌にフランセットの腕が振れていた。うっすらと汗ばみ、ひどく熱い。
「殿下のほう、だって……っ」
快楽に息を乱しながら、フランセットは頑張って反撃する。
「とっても、感じて、興奮した顔を、しているわ……!」
直後、指が引き抜かれ、固く滾った肉槍に奥の方まで貫かれた。
まっすぐにこじ開けられ、抉りこまれた衝撃に、フランセットは声すら出ない。
「――ッ、ァ……っ!!」
「……ッ」
無意識に逃げを打つ白い肢体を、両腕で抱き込まれ、ぐっと彼の膝の上に押さえつけられる。その状態で前後に揺さぶられて、フランセットの目裏に白い光が散った。
「や、ァ、あ、あああっ――!」
「ッ、フランセット、ほら、もっと、教えてよ。あなたの中にいる僕は、どんな風なの?」
「熱く、て、かたくて、中、もう、いっぱい……ッ、も、入らな……っ、あん、っあ、だめ、そこ、だめぇっ」
「うそつき、気持ちいいくせに……!」
ソファの座面に、引き倒された。
片方の足首をつかまれて、折りたたまれ、大きく足を広げられる。
さらけ出されて、視姦される羞恥を、感じる隙もない。
赤く濡れ、熟れきった果肉を、獰猛な雄芯に何度も貫かれ、抉られて、貪られた。ぐちゅぐちゅと淫らな水音が、フランセットの上気した肌に絡みついていく。
「あッ、あ、あ、あっ、ん、も、イっ、ああぁっ!」
フランセットの体がひときわ大きく跳ねた。絶頂に押し上げられて、襞が快楽に悦び、彼をきつく引き絞る。
メルヴィンが息を詰めた気配がした。肉杭が震えて、精を一度に吐き出していく。腰を打つ動きが緩やかになり、フランセットは震える吐息をはきだした。
「……」
気だるげな表情のメルヴィンが、自身をゆっくりと引き抜きながらフランセットのくちびるを求めてくる。ソファに押し付けられるようにして、熱く絡むような口づけを受け入れていると、ふいにメルヴィンの腰の動きが止まった。
彼の性は、まだ半分ほど埋まっている。
「殿、下……?」
呼びかけた直後、フランセットはぎょっとした。
先ほど吐精して、萎えていたはずのそれが、再び硬さを取り戻し始めたからだ。
「えっ、な、なんで……っ」
「あー……」
メルヴィンは片手で顔を覆った。ほんのりと、耳が赤くなっているようだ。
「ごめん、フランセット。もう一回いい?」
「で、でも、今夜はお互い疲れていて」
「疲れなら癒してあげるから。魔法で」
「そういう問題では……!」
「夕食会を抜けた後、使用人に、男二人がケンカを始めたっていう報告を聞いて、慌てて戻った時に――」
フランセットは喉を震わせた。ぬちゅ……とメルヴィンの剛直が、押し入ってきたからだ。
「メルヴィン、殿下……っ」
「頭に血が昇った男二人の間に、あなたがいて、僕はものすごく腹が立ったんだ」
一度達して、ねっとりとゆるんでいた膣肉が、再び熱杭に満たされていく。