「っ、メルヴィンさま。いまから、ですか」
「理由はよくわからないけれど、あなたが自信をなくしているのだとしたら、そうじゃないって伝えたいと思って」
ドレス越しにじっくりと胸を揉まれ始めた。もう片方の手が、ドレスの背のひもをほどいていく。
「自信、なんて……」
王太子妃としての立場にあって、自分はよくやれていると思う。そこに関しての自信は、築くことができつつある。
けれど女性としての自信が持てているかというと、否と言うしかない。
なぜなら夫がこんなにかわいいからだ。
「ねえ、フランセット。思い悩んでいることがあったらなんでも言って。あなたに憂いがあるのなら、僕が全力ですべて解決する。約束するよ」
「あ……っ」
背中のひもを全部ほどかれた。コルセットごとドレスを腰まで引き下ろされて、双乳がふるりとこぼれる。
大きなてのひらで片方を掬われて、ゆったりと揉みしだかれた。微熱を帯びた愉悦が体内を流れていく。
「あ、ん……」
「あなたがこの国へ嫁いできてから、僕はもしかしたら、あなたになにもしてやれなかったかもしれない」
耳朶に口づけて、甘く噛みながら、メルヴィンは静かな声で告げる。
「僕がフランセットに助けてもらったんだ。それなのに僕はただあなたを愛するだけで、あなたのためになにもできていない。それが、苦しいよ」
「メルヴィンさま……?」
固くなり始めた乳首をきゅっとつままれて、フランセットは肩を震わせた。
「っ、ん」
「あなたはきっと、僕がいなくても、ゆがむことなくまっすぐに生きていけるんだろうな」
「ちょっと、待ってください。さっきからいったいなにを――、っぁ」
乳首を指先でいじられながら、もう片方を口のなかにぬるりと含まれた。
弾力のある色づきを、ねっとりとしごくように舌で愛撫されて思考が霧散する。
「ぁ、あ……っ!」
「あなたの肌は、いつも甘ったるい花蜜の香りがする」
ちゅうっと吸い上げられて、激しい快感が背すじを走り抜けた。そのままくちゅくちゅと甘噛みをくり返されたので、立ったままの両ひざが震えてしまう。
「だ、め……っ、立てなく、なってしまいます」
「そうなったら、そこにあるソファまで運んであげるよ。それとも、なかから支えてあげようか?」
腰を抱いていたほうの手が、スカートをたくしあげていく。ドロワーズを引き下げられて、むきだしになったお尻のをなでながら、指先が陰唇にたどりついた。
溝に沿うように、じっくりと指が動いていく。にじみでた蜜がその動きを助けている。敏感な粘膜をなでられて、ぞくぞくするような快感にフランセットはびくびくと腰を震わせた。
「あ……っ、メルヴィンさま……」
「気持ちいい? フランセット」
「きもち、いい、です……、っん」
くちびるが重なった。舌が差し込まれ、深く味わうようにぐちゅぐちゅと口内を愛でられる。舌がきつくからんで、吸い出されたのちやわらかく噛まれた。
「っ、ぅん……っ」
胸を揉みしだかれながら、下肢の奥の蜜襞をぬるぬるとなでられて、フランセットは頭の芯がとかされていくような感覚を覚えた。
やがて、彼の指がぐぷりと隘路にねじ込まれてきて、淫壁をこすり上げられる快感に視界がにじんでくる。
「そんなに、いっぱい……だめ、です……」
口づけのあいまに訴えたか細い声は、ふたたびくちびるを塞がれることによって応えられた。
蜜孔に押し込まれた指は三本だった。ゆっくりと隘路を押し開くように埋め込まれるうちに、快楽のために滲み出た愛液がこぷこぷとにじみでて、フランセットの内股を伝っていく。
「だめ……だめ――、あ、ぁあっ」
指の根元までずくっと埋められて、つめの先まで快楽の波が押しよせてきた。もう立っていられなくてひざを折ると、体内の一点に支えられるかたちになってフランセットは喉を震わせた。
「やぁ、深い……っ」
「奥まで届いてるよ。わかる?」
フランセットの腰を片腕で抱きよせながら、優しい声でメルヴィンはささやく。フランセットは必死にメルヴィンにすがりついた。
「だめです、そこ、さわっちゃ」
「毎晩のようにふれて、あなたをよがらせている場所なのに?」
「いじわるなこと、言わないでください……っ」
フランセットの瞳にたまった涙を、メルヴィンは目尻に口づけてそっと吸いとった。
「だめな夫だな、僕は。あなたにもっと聞きたいことがあるのに、目の前にフランセットがいるとどうしても抱きしめたくなってしまう」
情欲を押し殺すような低い声に、フランセットの最奥がぞくりとした。知らず、彼の指をしめつけてしまって、羞恥に頬が熱を持つ。
「ちがうんです、いまのは――、ぁ、ん……ッ」
ぐちゅ……と奥の突きあたりをかきまぜられて、フランセットはびくびくと腰を震わせた。気持ちいいところを愛撫されているせいで、思考回路が溶かされてしまう。
「っ、あ……」
「あなたも僕とおなじで、僕に欲情するの?」
「言いかたが、いやらしい、です……っ」
「ぜんぶ、どうでもよくなるんだ」
ぐしゅ、ぐちゅっと、蜜をあふれさせながら、花びらが男の指に犯されていく。たくましい腕はフランセットの腰にからみ、力強く抱きしめている。
「どうでもよくなる。王太子としての責務も、僕個人としてしなければならないことも、あなたの王太子妃としての立場さえ――」
蜜孔を満たしていた三本の指が、ゆっくりと引き抜かれた。
その空隙にとりすがるより先に、次になにをされるのかがフランセットにはわかって、ぞくりと身震いが起きる。
「肉欲に溺れそうだ」
熱を帯びた先端が、濡れきった媚肉に押し当てられた。一度、浅いところをくちゅりとかきまぜたのちに、じっくりとねじ込んでくる。
反った喉に、熱い舌が這った。
「っひ――、あ、ぁ……っ」
「自分を見失ってしまうよ。あなたがいとしすぎて。あなたのなかに自分を、ほら、こうして、埋め込みたくて」
喉を舐めあげていく舌が、あご先を伝ってくちびるに辿りつく。官能に赤く色づいたそれを、覆うように舐めていく。
「ぁ、あ……ッ」
「あなたとひとつになりたくて。その欲に、どうしても理性が勝てない」
ズクっと奥までつらぬかれた。激しい快感に刺されるようで、身をよじってとっさに逃げを打とうとすると、強い力で背中を扉に押しつけられてしまう。
「や、ぁ……ッ。メルヴィンさまぁ……!」
「っ、フランセット。僕は」
激しく突き上げながら、メルヴィンは眉をゆがめた。
「あなたさえいれば。あなたが僕を受けれてくれるのであれば。ほかのことはもうどうだっていいと」
つま先は、すでに床から浮いていた。彼の両腕に抱え上げられるようにされて、フランセットはメルヴィンに貪られていた。
彼の劣情と熱情が、あますところなくフランセットの体内を満たして、揺さぶっていく。くちびるが奪われて、押し込まれた舌が口腔内の粘膜をぐちゅぐちゅとこすりたてた。
「ぅ、んんッ……!」
快楽に震える指先で、フランセットはメルヴィンの腕をつかんだ。
ひときわ強くえぐられて、視界が白く染まる。絶頂に達した体をなおもつらぬいていきながら、メルヴィンは両腕でフランセットを抱きしめた。
「――フランセット」
熱い吐息が耳朶にかかる。同時に、彼の白濁に体内が浸されていった。
「あ……」
「自分勝手でごめん」
フランセットの瞳からこぼれた涙をなめとりながら、メルヴィンは自身を抜き去った。
かすむ視界のなかで、フランセットはメルヴィンの頬に指でふれる。
「メルヴィンさま……」
「でも、こんな僕をあなたはいつも叱ってくれるでしょう? だから僕は、僕でいられる。王太子としての僕を作ってくれるのはあなただよ、フランセット」
快楽に崩れたフランセットの意識は、その言葉を拾ったあとに、薄く途切れていった。