44

 まどろみの中で、ユーマが幾度も、わたしの頬やひたいやまぶたにキスをおとすのを感じていた。
 ぐったりと横たわる体を、熱い腕で優しく抱きしめて、切なげに耳もとで囁いた。

「楓子。愛してる。愛してる――」

「3回だぁ?!」

 ゲル内に、スオウの声が響いた。わたしはまだ目も開けられず、重すぎる体をぐったりと寝台に横たえていた。
 ついたての向こうから、スオウの声が入りこんでくる。

「おまえ、相手は乙女だぞ。だから言ったんだ、初宵はおまえじゃない方がいいって。いとも簡単に酔いやがって」

 舌打ちがもれる。

「楓子が可哀想だろうが」
「……すまない」

 ユーマの声が低く謝罪を述べた。しばしの沈黙の後、明るい声が加わる。

「まあ仕方ないじゃん、終わっちゃったことはさ。つまるところ、この中で一番楓子の信頼を得ていたのがユーマだったってことだろ。だからお婆はユーマを指名したんだよ」
「おい、過去形でいうな。……オレだって、反省している」

 ユーマが苦い声でいう。それからさらに話し声は続いたが、わたしはそれ以上意識を保てず、まどろみに落ちた。

 それから7日間、わたしはすべての労働から解放された。
 もうなにもしなくていいと、おばあちゃんから言われた。
 わたしがするのは、蒼月の夜『闘士』と儀をむすび、月狼族に眠る禍々しき獣性を鎮めることだけ、と言われた。

 『闘士』は、言ってみれば狼の群れのボスだ。
 人並み外れた闘気を持ち、他の者を圧する。
 けれど闘気は無限にわきでるものではない。そのため、巫女と交わり、気の充溢をはかるのだという。

 一族からは今まで「楓子」と気軽に呼ばれていたのに、「巫女様」と呼ばれるようになった。
 それが酷くよそよそしく、まるで仲間はずれにされているような気持ちになった。そんな中で、おばあちゃんと、ユーマ、リオウ、スオウだけが今までと変わらず接してくれた。

 一番ショックだったのは、トウリから「巫女様」と呼ばれたことだ。

「どうして? トウリは今まで通り楓子って呼んで。だって、ユーマもリオウも、今までと変わらずそう呼んでくれるよ」
「あいつらは『闘士』だから。オレは、ちがう。呼び捨てなんかしたら、長老様たちに叱られます」

 トウリは寂しげに微笑んだ。

「でもオレは、たとえ立場が離れても、ずっと巫女様たちたちを応援しています」
「やめて、よそよそしいよ。那岐もいなくなって――トウリまで、離れていったら、寂しいよ」

 泣いていたのはわたしだけで、トウリはずっと、困ったように微笑んでいた。

 おばあちゃんが教えてくれた。わたしの、月狼族の目が青く見えるという性質は、まさしく『蒼月の巫女』の証らしい。那岐にはそれがなく、巫子(みこ)になり損ねたということだ。
 ひどく、那岐に会いたかった。
 今のわたしが何者なのか、まだ知らないであろう那岐に。

 7日目の夜、月が青く色づいた。
 紺碧と星のきらめきのただ中に、ぷかりと浮かんでいた。
 なんて薄っぺらい月だろう。
 息をふきつけて、遠くに飛ばしてしまいたい。

 この夜に来たのはリオウだった。
 リオウはとてもリラックスしていて、いつもと何も変わらず、明るかった。
 けれどわたしを寝台に連れていくと、笑みの種類が変わった。リオウはいつもわたしより足が遅く、力も弱い、1つ年下の男の子だった。けれどここにいるのは男だった。

「リオウの嘘つき。いつも、わざと負けていたの」
「ちがうよ。オレに勝ったときの嬉しそうな笑顔が可愛いから、何度も見たかっただけ」

 リオウはわたしに深く口づけ、あらゆるところを大きなてのひらで愛撫した。可愛いとか、やわらかいとか、いい匂いとか、そういうことを耳もとで甘く囁いた。
 リオウの舌とてのひらは、わたしが強く反応する箇所を的確に探りあてる。わたしはずっと、リオウの下で、縋るような、切ないような声を上げ続けた。胸への愛撫だけで酷く濡らされ、それをこすりつけるようにして花芯を弄ばれた。だから、彼の指先が蜜壺に分け入った時もうすでに、わたしは何度か達していた。

「ユーマが、3回したって言ってたけど」

 リオウがわたしの腰を抱えながら、指をぬぷぬぷと押し進める。

「ちょっと気持ちわかるな」

 指の関節を折り曲げて、蜜筒を押しひろげるようにする。そのたびに襞がこすれて、甘い疼痛が走る。

「あぁ……っ! ん、ふぅ……っ! リオウ、やぁ……っ」
「うーん、きついな。7日で締まっちゃったのかなぁ。ちょっとごめんね、楓子」

 リオウの顔が下へ、わたしの太ももの間へ移った。足を指を秘所に突き入れたまま、片方の手で膝を開く。
 彼の目にわたしの蜜壺が開かれている。羞恥に喉がひきつった。

「なっ、なに……っ?! や、いやだリオウ、見ないで……、――あああっ」

 ぬちゃり、とリオウの舌が花芯を舐めあげた。
 熱い何かがが背中を走り、しならせる。
 リオウは丹念にそこを舐り、中に入れた指をもう1本増やした。襞をこすったりひっかいたり、小刻みに動かしながら押しひろげてゆく。

「あ、あ、あ、だめ、リオウ、だめ……っ!」

 何かがせりあがってくる。
 また達してしまう。
 涙を流して首を振るわたしに、リオウは囁いた。

「いいよ。もう一度いきなよ、楓」

 そうしてカリ、と花芯を甘噛みした。
 わたしはあっけなく、高みに押し上げられた。

 もうこれ以上、とろとろになることなんてできない。
 わたしのあそこは溶けきって、ただ熱と、リオウの指先と舌を感じるだけだ。

「そろそろいいかな」

 リオウが顔を上げて、わたしの唇にキスをした。ねっとりと舌をからませ、下唇を噛みつつ離す。その間も、中に入れた2本の指はうごめいて、わたしを翻弄した。

「すごく可愛いよ楓子。耐えられるかな、オレ」

 2本の指が引きぬかれた。あ、と思った次にはもう、太い肉棒が押し入ってきた。ものすごい熱量が、ぬぷぬぷと入ってくる。ユーマとの初めてのときを思い出し、わたしは全身をこわばらせた。

「大丈夫。かなりほどけたから、気持ちいいはずだよ」

 頬をなでながら、リオウがいう。気持ちいいって――。その言葉に羞恥心をあおられ、頬を赤くした直後、奥まで貫かれた。

「あああぁっ! ん、ふぁ……っ! あ、あ、あ」
「はっ――、やっぱキツいな」

 リオウが眉をよせ、苦笑した。
 ゆっくりと、腰を動かし始める。

「あっあっ……! や、だめ、動いちゃやだぁ……!」
「可愛い声。楓、もっとないて」

 甘くささやいて繋がったまま上体を起こし、わたしの片足を自分の肩に乗せた。腰をぎゅっと押しつけて、リオウの灼杭がさらに奥に到達する。

「あああ……! リオウ、や……っ。あ、んんっ」
「っく……! 楓、もうちょっと力を抜くんだ」

 苦しげにリオウがうめく。そんなこと言われても、どうすればいいのか全然わからない。リオウの大きな手がのびてわたしの胸をわしづかみにする。指の間からぷっくりと主張する赤を、親指でこね潰す。腰の動きはさらに激しく、奥まで何度も突き上げた。

「あああっ! だめリオウ、わたし、もう……っ。あ、んん……っ!」

 リオウは低く呻いて強く蜜壺を突き上げ、直後に熱い精を放った。同時にわたしは達して、膣の襞はうごめき、リオウの熱杭を愛撫した。
 低く呻いて強く蜜壺を突き上げ、直後に熱い精を放った。同時にわたしは達して、膣の襞はうごめき、リオウの熱杭を愛撫した。
 リオウは何度か味わうように抽送し、引きぬく。こぷり、と水音がした。