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「謝るなと言っている。おまえは何も悪くないと」
「そんなこと……、んっ、……ふ、」

 シンが唇に口づけて、舌をねっとりとからませる。下唇を噛みながら離し、まっすぐに視線を合わせた。

「愛してる、楓子」
「わたしが――悪いの。わ、たしは……、っん、あの時、自分から、」

 シンの指が再び、陰唇をそっとなぞる。ゆっくりと、いたわるように。

「アスカに、抱かれに――んっ、だめ……っ」
「それは違う。おまえは一族を救いたかっただけだ。一族がおまえを追い詰めた」
「あっ……! でも、あ、すかが、淫乱だって、わたしを――、ぁあっ」

 シンの指がぬぷりと密筒に入りこみ、襞を撫でさすった。赤く傷ついているはずのそこは、甘い刺激に酔うように、さらに蜜をあふれさせる。

「あすかが、そう言うの……! わたしは、汚いって……っ、ぁ、やぁっ……!」
「オレは言わない。そんなこと思わない」

 シンが優しく、頬に口づけを落とす。あふれる涙を受けとめる。中に入ったままの指は、浅いところを優しく愛撫し続ける。もう片方の手は、胸のふくらみを包むようにゆらした。

「スオウと、リオウと、……っ、ユーマと、いろんな男と寝てる、――っん、雌犬だって、いうの。わたし、ちがう、ちがうのに……っ」
「ああ、そうだ。違う。おまえは違う。あの男は間違っている」
「あ、や、だめ……っ」

 シンの顔がおり、腹部をつたってふともものつけ根に辿りついた。わたしはシンの頭を抑えて、首を振る。

「だめ、だめ……! 見ちゃだめ、汚いの、傷だらけなの」

 簡単に両足を割り広げシンは花芯に唇をよせた。優しく口づけされて、腰がびくんと震えた。柔らかい唇での愛撫は、痛みではなく快感をもたらした。
 シンが広げた2つの内ももにも、無数の傷が走っている。
 見られたくなかった。
 わたしは首を振り、涙を流し続ける。

「ぁ、や、だめ、離して、いやぁ……!」

 花芯を丹念に舐められる。シンの長い指は蜜壺にあり、優しく襞をなでながら、ゆっくりと奥にすすんでいく。
 甘やかすような愛撫はゆるりとした快感を全身にもたらし、焦らされる。理性の届かないところが腰をくねらせ、シンの指をもっと奥へと誘う。あふれる蜜は陰唇だけでなく内ももにまで流れ、滴っていた。

 アスカに刻みこまれた行為と、シンに与えられる感触が、全然ちがう。
 今ここにいるのはシンなのに、アスカの影がのしかかってくる。
 わたしは完全に混乱した。

「っあ、だめ、いや、優しくしちゃやだ……」
「なぜだ。オレは優しくしたい」

 シンが顔を上げ、潤むまぶたに口づける。その間も、指は襞を愛撫し続けている。

「誰よりも優しくしたい」
「だっ……て、あすかが……!」
「オレはアスカじゃない」

 甘くからめとる口づけが、唇にほどこされる。

「シンだ」
「……っあ」

 ゆるりと、浅いところで膣がゆらされる。

「おまえを今、抱いているのはオレだ」
「……シ、ン」
「ああ、そうだ」

 涙がさらに零れた。
 シンの熱い舌が、優しく舐めとった。

「おまえが好きだ、楓子」
「――っん、ふ――」

 唇が再び押しあてられ、舌が舌をからめとる。ゆっくりと、優しく。

「――は、……し、ん……っ」

 シンの唇が胸に降り、立ちあがった頂きを舌で転がす。背筋がしなり、思わず逃げようとする腰をしっかりと腕で捕まえて、膣内の指を押し進めた。

「ん、ん、あ……!」
「痛くないか?」
「……たく、ない、――あ、」

 指がもう1本増やされた。
 1本目より早めに奥へたどりつき、ゆっくりとかき回す。中はもうとろとろになっていて、潤沢な愛液がアスカから受けた擦過傷をやわらげていた。

 乳首を舌で押しつぶされるたびに、きゅうと膣が締まる。シンの指にからみつくように食いこむのがわかる。甘い疼痛が波のように打ち寄せ、どうしようもなくなって、わたしはシンに手を伸ばした。彼は胸もとから顔を上げ、中にあった指を引きぬき、わたしの手に指をからめる。熱いキスが与えられ、わたしはシンの広い背中にしがみついて必死に受け止めた。

 腰を抱いていた腕に、ぐっと力がこもる。彼の太くて熱いものが陰唇に押しあてられ、わたしは息を飲んだ。そこでシンの動きが止まる。激しい炎を目の奥に宿しつつ、逡巡するように眉を寄せた。

「おまえのこの、柔らかい場所に、これを入れると聞いた」

 これ、とシンが肉棒で秘所をなでる。その刺激でわたしは泣き声のような喘ぎをあげた。

「こんなに狭いところには、入らない。やわらかすぎる。きっと傷つける」
「だい、じょうぶ。大丈夫だよ、シン」

 焦らされているようで、もどかしい。自然に腰が動いて、彼の先を撫でると、シンは驚いたように腰を引いた。

「――っ、動くな、楓子!」
「ご、ごめんなさい」
「い、いや、ちがう。すまない。何をやってるんだオレは」

 シンが混乱している。
 なんだかおかしくなってきて、わたしはふっと笑った。

「何がおかしい」

 シンが憮然とする。

「だって、おかしいもの」
「そんなことはない。オレは真剣に」
「うん」

 わたしは手をついて上体を起こした。全身がけだるく、微熱を孕んでいる。つられてシンも起き上がり、寝台の上であぐらをかく。わたしは膝立ちになり、シンの肩に両手を置いた。

「楓子?」
「そのまま座ってて。入れてあげる」
「おい――、っ」

 シンにまたがり、ゆっくりと腰を落とした。陰唇に先が触れ、シンが息をのんだ。

「ま、待て楓子、――っく」
「ふ……っ」

 つぷり、とシンの先が陰唇を割る。それだけで怒張が増し、襞を圧迫した。彼の両手がわたしの腰をつかむ。それでもゆっくりと、腰を落としていく。わたしの肉が悦び、彼を包みこみねっとりと愛撫する。シンが何かに耐えるように、顔をゆがめた。

「ふ……うこ、お前の中は、どうなっている。熱い。熱くてからみついてくる」
「うん……、っあ」

 自分で動くのは初めてだから、やり方がよくわからない。もう腰と膝がガクガクして砕けそうだけど、力を抜いたら自分の重みでいっきに奥まで貫かれてしまう。

「痛くないのか、楓子。っ、大丈夫、か」
「うん、へーき……、っん。シンは、いたく、ない?」
「――痛いわけがないだろう……!」

 シンがきつくわたしを抱きしめた。ぐにゅ、と中で灼杭が動き、わたしは高い声を上げる。それを塞ぐように、荒々しい口づけにのまれた。

「ん、んん……っ。も、だめ。足が――、ぁあっ」

 膝が震えてガクリと崩れ落ちるのを、シンの腕が受けとめた。ほっどしたのも束の間、ぐっと引き下ろされて、奥まで一気に貫かれた。

「あ、あ、っん……!」
「楓子」

 シンの両腕が腰と肩にからみ、強く抱きしめる。胸のふくらみが固い胸板に潰れ、突き上げられるたびに先がこすれて快感が突き抜けた。
 彼の熱いもので、中をゆらされ、かき回され、突き上げられる。そのたびにぐちゅぐちゅと淫らな音が滲みでる。わたしは彼の胸にすがりついた。熱く張りつめる固い棒は嵐のようにわたしを翻弄した。

 ふいに、繋がったままシンが肩をつかみ、押し倒した。後頭部が枕に沈む。シンの親指が色づいた乳首をすりあげて、ふくらみをもみこんだ。
 劣情にまみれた青い双眸に見下ろされ、ゾクリとする。ガン、と最奥まで突き入れられてわたしはのけぞった。首筋を舌が這い、きつく吸う。

「だ、だめ……っ。あとをつけたら、ユーマが怒る――」
「他の男の名を、呼ぶな……!」

 律動が激しくなった。何度も強く突き上げらえて、わたしは泣き声をあげる。何かがせりあがってくる。シンが覆いかぶさり、激しく口づける。シンから与えられるあらゆる刺激を、わたしは必死で受けとめることしかできない。

「楓子。愛してる。オレだけのものだ。楓子――」
「あ、あ、ん……っ! や、だめ……!」

 その時が近づく。中の襞が蠢き、シンの熱杭をしめつける。それによってさらに質量を増し、シンは容赦なく、幾度も奥に打ちつけてくる。
 腰が震え、足がピンと伸びた。

「あ、あ、あああっ」

 眼裏が白く弾け、背が弓のようにしなった。
 同時にシンの熱い迸りが胎内に吐き出され、どろりと広がった。