胸の先を舌で弄びながら、ユーマの手が下へ伸びていった。ズボンごしに、2本の指でそこをぐっと押されたとき、あたしは小さく悲鳴を上げた。
「布ごしでも、熱いな」
「や……! あ、あっ……!」
円を描くようにこねられて、あたしはビクビクと震えた。こんなの、嘘だ。嘘だ。
「や、嫌だ、さわらないで……!」
ユーマは酷薄に笑んだまま、あたしを見下ろした。
「我慢しなくてもいい。もう、つらいだろう」
ユーマの手が、ズボンの中に入りこんだ。あたしは喉を引きつらせた。ズボンの中で、ショーツをゆっくりと降ろされる。そして長い指が、割れ目をゆっくりと上下になぞった。
あまりの刺激に、あたしの喉がのけぞった。
「あ……!!」
「ああ、ずいぶんと濡れているな」
よくわからないことを、ユーマが言う。いや、知識としては知っているけれど、自分にそんなことが起こるわけがない。
「大丈夫だよ。すぐに楽にしてあげるから」
ユーマが囁いた。その時、体を重ねてから初めて、彼の瞳が優しげにやわらいだ。あたしの震える唇を、もう片方の指でなぞり、愛しげに口づけた。
「とても綺麗だ。僕の巫女」
そうささやきながら、彼の2本の指が、あたしの中にずぶずぶと入りこんだ。
内壁から直に、全身へ熱い何かが駆け巡る。あたしは声にならない声をあげた。涙は流れ続けた。
その時、唐突に、扉が開かれた。
冷たい風が一度に流れこみ、あたしは身震いした。ユーマが舌打ちをして、上体を跳ね上げる。ベッドの下に手をのばし、刀をつかんで鞘(さや)から引きぬいた。
あたしは風にさらされながらも、ベッドの上から動けなかった。ただ震えるからだを横たえて、涙にかすむ視界で、扉に立つ彼を見た。
燃えるような怒りを全身から立ちのぼらせ、シンはすでに刀を抜き放っていた。
*
言葉はなかった。
シンが振りおろす刀を、ベッドから素早くおりたユーマが迎えうった。
あたしは強張ったままの手で、毛皮のショールと上衣を一緒に引き寄せ、顔の上まで覆った。その中で両膝を抱えて縮こまり、耳をふさいだ。もう何も、見たくなかった。
きぃん、と高い音がして、何かが床に落ちる音がした。続いて、ユーマのうめき声がふさいだ耳に入りこむ。
「ユーマ……!」
シンの、低く煮え滾る声がした。
「絶対に許さない。殺す!」
あたしはとっさに、ショールをどけた。視界の真ん中で、床に片膝をつくユーマと、剣を振りあげるシンが映った。シン、と呼ぶ声は、かすれて声にならなかった。
でもあたしの言葉を追うように、軽やかな声が緊迫した空間に転がりこんだ。
「ハーイ、そこまで」
キリキリと、弦を引き絞る音が夜闇を乱した。扉の前に、1人の青年が立っていた。わたしと同じくらいの年齢だろうか。彼は愛嬌よく笑った。
「オレは弓がヘタなんだ。変なところに飛ばさないうちに刀を下に置いて。巫女姫に当たったら大変だろ」
シンは忌々しげに舌打ちする。やがてゆっくりと、刀を床に置いた。
「よーし。じゃあ次はユーマだ。うわっ、酷いケガ。無茶だよ、『鋼(はがね)の王』とやりあうなんてさ」
ユーマは無言で立ちあがる。あたしは思わず体を後ろに引いたけど、彼はこちらを一瞥しただけで、無言で青年のところへ足を向けた。
ユーマの右腕から、いっぱい血が流れている。シンが……やったのだろうか。